3Dマッピング ドローンマッピング LiDARスキャナの技術や応用事例を簡単に解説
近年、センサ技術の一つであるLiDARが、自動運転、測量など様々な分野で活躍しています。名前は聞いたことあるけれど、具体的な仕組みや役割を知らない人もいると思います。本記事では、 3D LiDARの原理の解説から応用先までご紹介します。LiDARについてより理解が深まるはずです。
LiDARとは
LiDAR(Light Detection And Ranging:光による検知と測距)またはライダーセンサー、とは、レーザー光(赤外線)の照射によって周囲の状況を観測するセンサ技術の一種です。 LiDARと類似したセンサの中に電波を使うミリ波レーダーがあります。赤外線は電波よりも波長が短いため、LiDARはミリ波レーダーよりも小さな物体を検出できるのが特徴です。
LiDARは、気象学や測量の分野で初めて利用されました。近年では高精度な物体検知が可能なことから、自動車メーカ各社が自動運転技術にも採用するほど注目を集めています。
LiDARの原理
LiDARはパルス状のレーザーを対象物に照射し、センサが反射光を受信するまでの時間と光の速度から、対象物までの距離を算出します。レーザー照射と距離算出により取得した無数の点が点群データとなり、周囲の状況把握を可能にします。
ヘリコプター、ドローンなど空からレーザーを照射し、地表面を計測する方法や、その場で360deg回転しながらレーザーを照射するなど、スキャン方法はさまざまです。
LiDARの応用例
1. 自動運転
LiDARシステムの適用先の一つが自動運転です。自動運転を行うためには複数のセンサが必要であり、カメラ、ミリ波レーダー、LiDARの組み合わせが主流となります。
カメラは、取得した画像データから画像認識技術により、人や自転車などの物体認識は得意ですが、対象物までの距離測定は苦手です。
ミリ波レーダーは、天候の影響をうけずに距離測定できます。しかし、電波を使用しているため段ボールや発泡スチロールなどの反射率の低い障害物の検知が苦手です。
LiDARは、カメラが苦手とする対象物までの距離測定、ミリ波レーダーが苦手とする反射率の低い物体の検知も可能なため、カメラ、ミリ波レーダーの弱点を補えます。
LiDARは、自動運転を支える重要な要素技術の一つであり、既にLiDARを搭載している車種は、TOYOTAのMIRAI、レクサスのLS、メルセデスベンツのSクラスなどがあります。
2. 3Dマッピング
LiDARとカメラを車両に搭載し、移動しながら道路や道路周辺の3次元データを取得できる3Dマッピングシステムがあります。 道路以外にもトンネル、堤防の周辺の情報を取得し、インフラ設備の現況把握、管理が可能です。
LiDARをドローンに搭載し、空からマッピングする方法もあります。上空から無数のレーザーを照射するため、森林やジャングルの下に隠れた地形データの取得が可能です。 ドローンによるマッピングは、2018年、およそ2100㎡の面積をスキャンし、マヤ文明の遺跡サーベイにも大きく貢献しています。
3. 測量
LiDARシステムを利用した測量には、地上レーザー測量と航空レーザー測量の2種類があります。
地上レーザー測量には、LiDARシステムを地上に設置する固定型と、自動車などの移動体に搭載させる車載型があります。航空レーザー測量は、航空機やドローンなどに LiDARシステムを搭載し空からレーザー光を照射させる測量方法です。
以下では、測量用のLiDARとして、固定型LiDAR、ハンディLiDAR、UAV LiDARを紹介します。
測量用のLiDAR
本章では、測量用のLiDARとして、固定LiDARであるFARO社製3Dレーザースキャナ、ハンディLiDARのZEB Horizon、FARO Orbis、UAV用のGenius LiDARをそれぞれご紹介します。
固定型LiDAR
固定型LiDARの一例として紹介するのが、FARO社製3Dレーザースキャナです。
レーザーを周囲に照射し、機器周辺の環境を3次元の情報データとして短時間で取得できます。簡単操作で計測精度は1ミリメートル、また、フルカラーで3Dデータを取得できるのが特徴です。
2019年、フランスのノートルダム大聖堂は、火災により焼損しましたが、過去に測定した3Dレーザスキャナによる点群データが復旧の手がかりとなりました。また、複雑な配管がひしめく工場の改修工事の ための現況測定も、膨大な時間をかけることなく測定が可能です。
固定型LiDARは、建築・プラントの管理、文化遺産の歴史保存などで活用できます。
ハンディーLiDAR
1.持ち運び可能な3Dレーザースキャナ『ZEB-Horizon』
測量用LiDARには、LiDARスキャナ自身の位置を把握するためにGPSと組み合わせたものがあります。GPS利用の場合、屋内や地下などの電波が届かない場所での測量が困難です。ZEB-Horizonは、GPSを使わずに SLAM技術により自身の位置を自己推定するため、屋内や地下でも使用できます。また、小型で軽量のため車両やドローンにも搭載可能です。
地下や洞窟、人が入れない狭い空間の測量、空からの測量など、ハンディLiDARの用途は多岐にわたります。
2.固定式スキャン技術を取り入れたLiDAR『FARO Orbis』
ZEB-HorizonのSLAM技術をそのままに、さらに固定式LiDARの利点を持ち合わせたLiDARがFARO Orbisです。
移動しながらハンディーLiDARとしてのスキャン中に、15秒間の静止してスキャンすることで、固定式レーザースキャナ並みのより高精度・高精彩の3D点群を取得できるハイブリッドタイプのLiDARです。
UAV(ドローン)LiDAR
UAV LiDARは、ドローンなどの無人航空機とLiDAR技術を組み合わせた測量システムです。固定型LiDARやハンディLiDARは、山間部など立ち入りが難しい場所での測量は困難ですが、 UAV LiDARは空からレーザーを照射するため、容易に測量できます。また、有人の航空機よりも人件費がかからないため、低コストで測量できるのもメリットです。
UAV LiDARの一例としてGenius LiDARがあります。
単体重量は1.2kgと軽量、取り付け分解も容易な点が特徴です。
鉱山調査、電力線検査など様々な測量案件で活躍できます。
まとめ
本記事では、LiDARの原理から応用事例、製品紹介を行いました。高精度に周囲の状況をスキャンできるLiDARは、自動運転、測量と様々な分野で活躍しています。地上レーザ測量、 航空レーザ測量とスキャン方法は複数あり、LiDARを搭載した製品も多種多様です。
持ち運び可能な3DレーザースキャナがZEB-HorizonとFARO Orbisです。